最新臨床栄養学トピックス

2022年6月20日

短腸症候群について島本和巳先生からレポートが届きました。

論文紹介:島本昨年、短腸症候群に対してGLP2アナログ製剤であるレベスティブ®が日本での製造販売を承認されましたので、今回はそれに関わる文献を紹介致します。

Glucagon-like peptide 2はG蛋白共役型受容体に結合し複数のG蛋白を介してシグナルを伝達、cAMPおよびマイトジェン活性化プロテインキナーゼ経路に影響を与えて、陰窩細胞のアポトーシスを抑制することで、小腸の重量や絨毛長を増加させ、吸収表面積を拡大することが出来る。ネイティブGLP2は約7分の比較的短い生物学的半減期をもつので、分解耐性アナログであるGLP2(テデュグルチド)に取って代わられた。

日本では2021年にグルカゴン様ペプチド2アナログ製剤であるテデュグルチドが認可された。その際の根拠となった論文が、国際共同第Ⅲ相臨床試験の結果を示した、Palle B. Jeppesen,et al.Teduglutide reduces need for parenteral support among patients with short bowel syndrome with intestinal failure.gastroenterology;143(6);1473-1481:2012であり、テデュグルチド0.05㎎/㎏/day皮下投与した43例の群とプラセボを皮下投与した43例の群を比較検討している。エンドポイントとしてはレスポンダー(20週目と24週目に、非経口投与での栄養量がベースラインの20%以上減少)の数とした。
結果は、テデュグルチド群のレスポンダーは27/43[63%]で、プラセボ群のレスポンダーは13/43[30%]より有意にレスポンダーが多かった。

オーストリアにて単施設で行われた、テデュグルチドを使用した13例の後方視的研究の結果が、Felix harpain,et al.Tedeglutide in short bowel syndrome patients:A way back to normal life.Jounal of Parenteral and Nutrition;46;300-309:2022で示されており、13例の小腸の長さは平均82±31㎝で、テデュグルチド投与24週後には12/13[92%]がレスポンダーと判定され、9/13[69%]が非経口投与を完全に中止することが出来た。フォローアップの全期間のなかで、最終的に全症例(13/13[100%])で非経口投与での栄養量をベースラインの20%以上減少を達成した。また、平均の便回数はベースラインで23.9回/dayだったのが24週後に14.6回/dayに減少し、夜間の中途覚醒も減らすことが出来た。

毎日の皮下注を要し、高額な医療ですので適応は十分に吟味する必要がありますが、短腸症候群に対して有効な治療になりうると考え紹介させて頂きました。

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